美奈子一家に再び密着「泣きながら撮りました」 取材者が語る裏側



●「私の子育ては間違っているのかな?」
フジテレビドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で、“ビッグマミィ”ことタレント・美奈子の大家族に密着した、11日放送の「新・漂流家族 2019夏 ~美奈子と夫と8人の子供~ 前編」に反響が集まっている。同番組では今年2月の放送で密着したばかりだが、いきなり大家族の父親になった元プロレスラー佐々木義人さんと、思春期の長男&長女、さらに子育てをめぐって対立する美奈子との間に不穏な空気が漂い、あす18日に放送される「後編」では、その感情がついに爆発する。

しかし、『痛快!ビッグダディ』から一家を見てきた、演出・撮影の東信幸氏(ゼロクリエイト)は、そんな家族を「正直うらやましいなって思うんです」と語る。その真意は――。

○■また大きな転換期が訪れると感じた

――前回の密着取材からまだ半年ですが、ハイペースですね。

前回は長男の星音(しおん)が義人さんとの確執もあり、家を再び飛び出してしまい「家族と縁を切る」と言い放ったところで撮影が終わっていたので…。その後の星音のこと、そして7女出産後の家族の様子がどうしても気になり、放送後すぐにカメラを持って佐々木家に顔を出すことにしたんです。そしたら相変わらず家族の中に長男・長女の姿がなく…。どこか寂しい空気を感じる中で、いろいろなことが起き始めたという感じですね。

やはり、星音と、長女の乃愛琉(のえる)に関しては母・美奈子さんの心配は絶えず、会話の中で美奈子さんから「実はもう一度、星音を家に連れ戻してあげたいんだよね」というキーワードが出てきたので、これはまた佐々木家に大きな転換期が訪れると感じ、撮影を再開することに決めました。

――星音さんは、前回の放送で「家族と縁を切る」と言っていたままで、家族の宿題になっていましたもんね。

実は我々も前回まで、星音が家を飛び出して知人の家を転々としている理由に関して深く掘り下げることができなかったんです。というのも、本人が19歳を迎え、大人になって行く中で、当然話したいことと話したくないことがあるのも分かっていましたし…。まずは、星音の生き様を掘り下げる前に、物語の主役である父・義人さんの生き様を掘り下げることが優先であると考えたからです。

しかし、今回の撮影で星音により深く取材をする中で、確かに彼にも同情できる部分はありましたが、一方で彼にも悪いところや甘えてる部分がたくさんあることに気付きました。それは思春期ならではの感覚とは少し違っていて、星音の中に潜む、闇の部分が深く影響しているのでは?と感じたんです。

――星音さんのことは小さい頃より見ていたからこそ、心配する部分も多かったのではないでしょうか?

そうですね。『ビッグダディ』の頃は、4つも5つも年上の林下(清志)さんの兄弟たちに萎縮して“泣き虫の星音”というイメージだったんですけど、大きくなって久しぶりに会ったときに、想像以上に大人になっていて、あの当時とは全然違う感覚を持っていたので、ようやく自己表現ができる環境になったのかな?と思っています。

――そんな一面が、今回の密着では映し出されていると。

私も中学のとき、親が離婚して母子家庭に育っているので、なんとなく星音の複雑な気持ちが理解できるんですよ。離婚したら当然、生活も質素にならざるを得ませんし、私も母に頼る訳にいかず、高校時代からバイトに明け暮れて、その後も新聞配達をしながら大学の学費を稼いでいました。だから、星音が義人さんに「お金がなかったから働いて通信制の高校に通うしかなかった。本当は普通科の高校に行きたかった…」と泣きながら告白したときに、星音には夢を諦めずにもっと前向きに生きてほしいと、心から思いました。そして、これまで内向的な性格で自分の意見を言えなかった星音が本音をさらけ出してくれたことが、うれしくもありました。今回の撮影では、そんな星音の成長に注目して見ていただきたいですね。

○■前回放送後の反響で落ち込んだ美奈子

――今回の放送で、星音さんも乃愛琉さんも、口をそろえて「将来やりたいことが分からない」と言っていたのが印象的でした。

「やりたいことが分からない…」というのは、思春期の若者が共通に抱えている問題だと私は思います。私も星音と同じ年頃には将来の目標なんて何もありませんでしたし、やりたいことが見つかっている10代の方が稀(まれ)だとは思います。高校を中退したいと考えて行動することのほうが、逆に勇気がいることだと思いますね。

星音はやりたいことが見つかっていたのですが、それを貫くことができませんでした。それは彼自身の甘さであり、これから直さなければいけない課題ですし、一方で乃愛琉は、次回の放送をご覧いただければ分かりますが、やりたいことこそ見つかりませんでしたが、週5日のフルタイムで働いていて、やりたいことを叶えるために一生懸命お金を貯めています。2人とも高校を中退してしまいましたが、やはり女性の方が現実主義なんでしょうね。今では年下の乃愛琉のほうがたくましく成長しています。

――前回の放送を見て、美奈子さんは何かおっしゃっていましたか? ブログでは「夫婦喧嘩の最中はヒートアップしていて 自分の気持ち優先にしてしまっていたけど 子供達の気持ち表情にでていて 改めてテレビで見て申し訳なかったな」と反省していましたが…。

義人さんと結婚されてから、いろいろな意味で日々マインドが変わってきている部分もあって、一概には言えませんが…客観的に番組を見て、美奈子さんなりに衝撃を受けたようです。ネットでの書き込みや記事を見て、やっぱり自分はこういう性格だったんだとか、こういうところが足りなかったんだとか、本人もたくさんのことを学び、足りないところに気づいたみたいです。特に、子どもの育て方に関して、多くの方から意見を頂き、励みになる部分もあれば、かなり落ち込んだ部分もあったようで…。放送後には私宛に毎回「私の子育ては間違っているのかな?」って不安げに連絡してくるので、本人も悩んでいる様子でした。

――こういう密着を受けるのは初めてだった義人さんは、いかがでしたか?

義人さんはこれまでプロレスラーとして活躍していましたし、人前に出ることは苦手ではないのですが、テレビでこれだけ長期間撮影するのは、この番組が初めてでした。最初はカメラを意識して、撮影が終わるとスタッフに「さっきのインタビュー大丈夫でした?」なんてスタッフに気をつかっていましたが、一度美奈子さんと大ゲンカをしてからは、ありのままの姿を撮影させてくれるようになりました。その分、衝撃的なシーンも多く、ヤラセだろと思われがちですが、実際にあのままの性格なんですよ! 感情的になりがちな熱い性格の人ですので、カッとなったらすぐに「バカ野郎!」「てめぇ!」ってなっちゃって、子育てに関しても決して信念を曲げない人なので、「俺は誰に言われてもこのスタイルを変えませんよ」って…(笑)

でも、そこが義人さんの良いところでもあると私は思うんです。子供たちは「血のつながってない親なのに、なんでそこまで言われなきゃいけないんだ…」って思うだろうけど、結局ふたを開けてみたら正論を言われて、自分たちが間違っていたことに気づいたことも多くありますし。ただ、それが正論過ぎて言い返せないから、子供たちが反抗してしまう部分もあるんですけどね。

●「もう離婚だ!」の翌日に…

――前回の放送の際にお話を伺ったとき、東さんは、美奈子さん&義人さんを「お似合いのカップル」とおっしゃっていましたが、その印象は変わりませんか?

そうですね。2人とも自己主張が強すぎるんですけど(笑)、本心では本当に親身になって子供たちのことを考えているし、お互いリスペクトし合っている部分もあったりするんです。美奈子さんも義人さんに言われたことで感情的な性格が徐々に思慮深く変わってきましたし、義人さんも美奈子さんに影響されて「これじゃいけないな」って変わってきたところもあって、持ちつ持たれつの良いバランスというか、ケンカすればするほどお互いの仲が深まっていくような夫婦なのかな?って、客観的に見てそう思います。

――今回の前編で、義人さんが家出を繰り返していると紹介されましたが、それが良いガス抜きになっているんですかね?

あの2人は本当にケンカをしてストレスを発散する夫婦なんですよ。それも原因は全て子どもの教育に関すること。美奈子さんはどんどん我慢強くはなっているんですけど、やっぱり引かないし、義人さんも引かない。ケンカになるとその場ではもう収拾がつかない状態なんですけど、1日経つとケロッとしてる(笑)。「てめぇ!」とか「もう離婚だ!」なんて毎回言うんですけど、翌日になるとラブラブで公園に行ったり、ご飯食べに行ったりしてるんです。夜中に私の携帯に美奈子さんから「また義人とケンカして家出てった! 離婚届け取ってくる!」って…今回の撮影中にも何度も何度も似たような連絡があったんですけど、その都度翌日に「ごめん、仲直りした」って連絡が来て、「またかよ!」みたいな(笑)。正直、最近どこまで本気なのか?私にも分からない状態です…(笑)
○■義人さんに“父性”を感じる

――18日放送の後編は、美奈子さん、義人さん、星音さんの修羅場が予告されていますが、見どころをお願いします。

星音が家出から10カ月ぶりに帰ってきて、そこから怒涛の展開になっていきます。彼が実際にバイトを探しだすんですけど、その中で彼自身の甘さや足りない部分が明るみに出てきて、最終的に“事件”を起こしてしまう…。その時、義人さんと美奈子さんは…というような展開が後編の見どころですね。これまで本心をさらけ出さなかった星音が、初めて両親に対して今まで溜めていたことを全て吐き出す場面があるんですが、それは今回僕も撮影しながらちょっと手が震えて泣きながら撮りました。「星音がこんなこと言うようになったんだ…」って。でも、ちょっとうれしかったんです。

――成長しているんですね。

そうですね。彼が本心を言ったことで家族が1つにまとまっていく姿が後編で表現されていますので、ぜひご覧いただき、「家族ってこうなんだ」とか「こういう生き方もあるんだ」と、家族のあり方を再認識していただきたいです。

――でも、今の時代にあそこまで本気で息子を怒るお父さんも、ある意味貴重な存在ですよね。

義人さんは真正面から子供たちとぶつかり、本音で思っていることを言うんです。それに対して、子供たちも感情をぶつけるっていう…昭和の家族のあり方っていうか、決して今風ではないかもしれないけど、それが今の時代、心に響くのでは?って、私は正直うらやましいなって思うんですよね。こういう父親がいたら…親子の関係って、本当はそうあるべきなんじゃないかなって、いつも撮りながら感じています。義人さんに、僕は“父性”を感じるんです。

――今後も引き続き、この一家を追っていく予定ですか?

そうですね。星音もまた新たにバイトを探しだしましたけど、それが続くのか続かないのか。乃愛琉も高校中退した後、家を出たいって言ってるし、まだまだこれから波乱の展開がこの家族には起きていくと思うので…。それに、長男・長女以外にも、下の子供たちがこれからどんどん大きくなって巣立って行きますから、それぞれに新しいドラマが生まれてくると思います。

――ナレーションは、前回に続いて野村宏伸さんですが、いかがでしたか?

格段に前回よりも上手くなっていて、俳優さんってすごいなって思いました(笑)。野村さんのあのハートフルで温かい声が、家族を表現するのにものすごく重要なポジションだと思っているんです。野村さんは自分の家族もあり、これまで離婚経験もあるので、そのフィルターナレーションを読んでくれることが、番組をさらに深い内容にしてくれていると思います。

●東 信幸1975年生まれ、愛知県出身。京都産業大学卒業後、テレビ制作会社に入社。その後、制作会社・ゼロクリエイトに入社し、『痛快!ビッグダディ』『イチから住~前略、移住しました~』(いずれもテレビ朝日)など、ドキュメンタリー番組を中心に手がける。
(中島優)

画像提供:マイナビニュース


(出典 news.nicovideo.jp)